あわてて買わない ―― わたしの買い方のこと
前回は、「負けを消してから、利を伸ばす」という話を書きました。買ったあと、どう守って、どう利益を育てるか。そして最後に、何を選ぶか、いつ買うかは、また別の回で、と書きました。今日が、その回です。前回少しだけ触れた、テーマ・流動性・押し目・需給を、今日はもう少しだけ深く書きます。
ただ、これはいちばん助言に近づきやすい話です。だから先に言っておきます。これはわたしのルールです。人にすすめるものではありません。買い方は、その人の暮らしや、性格や、使えるお金で変わります。これは「正解」ではなく、わたしが自分のために決めたやり方です。
買うまでに、わたしが見るものは、だいたい決まっています。テーマ、流動性、押し目、需給。むずかしい言葉ですが、ひとつずつ書きます。
わたしは、一つの会社を当てにいきません。まず、世の中の大きな流れを見ます。お金が集まりやすい方向のことを、わたしは「テーマ」と呼んでいます。一日だけ騒がれて消える話ではなく、同じ言葉が何か月も新聞に出てくるような、長い流れ。世界中が同じものを必要としはじめたとき、その流れに乗るほうが、一つの名前を当てにいくより、わたしには合っています。当てにいって外れると、立ち直れないからです。流れなら、一つ外しても、まだ立っていられます。
そして、売り買いする人が多いものだけを選びます。売り買いする人の多さを「流動性」と言います。人が少ないものは、売りたいときに、思った値段で売れません。逃げたいのに逃げられない――それが、いちばん怖い。いちばん最初の失敗のあと、わたしはそう思うようになりました。素人にとっては、「いつでも売れる」ことが、何よりの安心です。逃げられない場所には、お金を置かない。
上がっている途中では、飛びつきません。一度、少し下げるのを待ちます。上がっている流れの中の、一時的な下げ。これを「押し目」と言います。高いところで飛びつくと、最初の下げで怖くなって、慌てて売ってしまう。少し下げたところで買えると、同じ下げが来ても、落ち着いて持っていられます。これが前回の「負けを消す」に、まっすぐつながります。買う値段が低いほど、あとで消すものが、少なくてすむからです。
値段は、良いニュースだけで動くのではありません。買いたい人と売りたい人の、数のバランスで動きます。これを「需給」と言います。どんなに良い話が出ても、買う人より売る人が多ければ、値段は下がる。逆に、地味でも買う人が増え続けていれば、上がっていきます。良いニュースの日に、かえって値段が下がることもあります。良い話で、持っていた人がいっせいに売るからです。それを知ってから、わたしはニュースに飛びつかなくなりました。だからわたしは、ニュースの中身より先に、「いま、誰が買っているのか」を見るようにしています。
そして、買うと決めても、一度に全部は買いません。少し下げるたびに、何回かに分けて買います。お金は、いつも少し残しておく。この残りを、わたしは「余力」と呼んでいます。余力があると、さらに下げたときに、こわごわではなく、落ち着いて買い増せます。全部を使い切った人は、いちばん安いところで、もう何もできません。買う力を最後まで残しておくこと。これも、わたしのルールです。
こうして並べると、むずかしいことをしているように見えるかもしれません。でも、やっていることはひとつです。当てにいかない。流れに乗って、売れるものを、あわてず、分けて買う。当たっても、自分の腕だとは思いません。外れても、立て直せるようにしておく。それだけです。
買い終えた後は、しばらく動きを眺め、可能ならばその場で利益確定と逆指値を設定し、その日の相場を閉じます。これはわたしのルールで、人にすすめるものではありません。
そう思っていたら、めめが、何も知らない顔で膝に乗ってきました。

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