利益が出たら、守りを厚くする ―― 大きく上がった一つを、自分から崩した話
投資をしていると、「損が出てこわい」という話はよく耳にします。でもわたしには、それと同じくらい気をつけている瞬間があります。利益が大きく出たときです。
何年か前のことです。投資を始めた頃から、金(ゴールド)を少しずつ買い足していました。あるとき、わたしにとっては大きな額を、その一つにまとめて足しました。
そのあと、金の値段は大きく上がりました。口座の数字がふくらんでいくのを見て、最初は素直に嬉しかったです。でも、しばらくしてこわくなってきました。
よく見ると、わたしの資産は、その一つの値動きにずいぶん引っぱられる形になっていました。上がるときは気持ちがいいのですが、下がるときも同じだけ大きく動きます。一つのものに、自分の安心がぶら下がっている。そう気づいたら、夜にふと落ち着かなくなりました。
そこでわたしがしたのは、増えた分だけを、いったん利確することでした。元のお金には手をつけません。ふくらんだ分だけを「なかったもの」として取り出し、いくつかに分けて持ち替えました。一つに偏っていた状態を、自分から崩して散らしたのです。
これは「もっと攻めるため」ではありませんでした。むしろ逆です。痛みを小さくするためにしました。もしこのあと値段が下がっても、元のお金は残っている。一つがこけても、全部はこけない。そういう形に作り変えただけです。利益で買ったのは、新しい安心でした。
あとから思えば、利益が出た瞬間というのは、人がいちばん欲を出しやすいときなのだと思います。「もっと持っていれば、もっと増えたのに」。その声は、今でも聞こえます。でもわたしは、その声に従って買い増すより、増えたぶんで守りを厚くするほうを選びました。
これは、前に書いた「損失を取り戻そうとしない」という話と、ちょうど表と裏なのだと思います。損が出たときは、取り返そうとして無理をしない。利益が出たときは、もっと欲しがって無理をしない。こわいのも、嬉しいのも、どちらも気持ちが大きく動く瞬間です。その動いた気持ちのまま手を動かさない――それが、わたしの決めごとです。
利益は、攻めるための燃料ではなく、守りを厚くするための材料。そう思うようになってから、相場の上下に、前ほど振り回されなくなりました。
最後に一つだけ。これはあくまでわたしのルールで、人にすすめるものではありません。同じやり方が、誰にでも合うとは思いません。ただ、「増えたときこそ守りを考える」という見方は、今のわたしの安心のもとになっています。
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